薬害
病原体:非生物的病原
薬害とは農薬などの処理によって芝、樹木などの作物に生じる生理的障害をいう。しかし、薬害を起こしても、病害虫や雑草害を食い止めて総合的に生育が良好になった場合はこれを薬害と言わない場合がある。
菌の主な生息部位
発生芝種・発生時期
発生生態
薬害とは農薬などの処理によって芝、樹木などの作物に生じる生理的障害をいう。しかし、薬害を起こしても病害虫や雑草害を食い止めて総合的に生育が 良好になった場合はこれを薬害とはいわない場合がある。除草剤と植物成長調整剤(PGR)の場合、雑草・作物に生じる症状は"薬害"といわず"薬効"とい われている。 農薬は農薬取締法に準じて登録取得される。取得するためには薬害試験も行われ、もし発生する場合にはその作物は登録適用外となる。したがって、登録 されている作物は基本的には薬害は発生しない。しかし、実際は様々な栽培条件や気象条件あるいは薬剤の無意識な登録外使用などによって薬害が発生してしま うことがある。行本・浜田(1985)や伊藤(1993)の記述を芝分野に当てはめれば次の条件では薬害発生の危険性が出てくる。
栽培条件
発芽直後の幼若芝、軟弱になった芝、病害虫の被害跡、浅根生育の芝、芽数の少ないところ、オーバーシードやインターシードされたベースの芝、水はけの悪いところ、薬剤吸着の少ない土壌、サッチのないところ、傾斜地やくぼみ地、排水口付近
気象条件
高温、低温、強光、乾燥害、寒害などの強い環境ストレスを受けた芝、長雨・曇天続きによる徒長芝
薬剤使用条件
高濃度、多水量、重複散布、混用使用、ドリフト(適用外作物に)、踏み込み、スポット処理、張り芝直後薬害が出るとすれば以下の症状が現れる。
DMI殺菌剤:濃緑化(特に施肥の少ない管理グリーン)、生育抑制、芽数減少
接触剤(殺虫、殺菌剤): 葉先の枯れ、根部障害
除草剤:根部=発芽・発根阻害、奇形根形成(こぶ状根、こん棒状根)、根部機能障害、枯死、茎葉部=褐変枯死、奇形、アントシアン発現、黄化(クロローシス)、白化、落葉、生育抑制
予防対策
使用薬剤側からいえば希釈倍数、薬量、散布水量、適用作物、散布時期など登録された使用方法を守ることが第一である。また、散布場所によってはドリフトや重ね撒き、踏み込み薬害にも注意すべきことはもちろんである。芝管理側からいえば肥料の過少、軟弱芝、浅根芝は薬害が出やすい条件といえる。
治療対策
発生してしまった場合の薬害が一過性のものかどうかを見極めることが大切である。一般的にいえば殺菌剤の場合、非浸透性薬剤(接触剤)によるものは一過性、浸透移行性薬剤によるものは回復に長期間を要 する。晩秋に薬害を発生させた場合は芝が生長してくる翌春まで回復しない。なお、薬剤による葉のヨゴレは薬害ではないが、グリーンなどで発生すれば美観を 損ねる。希釈倍数を高めたり、高濃度使用の場合には展着剤を加用したり、あるいは散布水滴を大きくすることで解決できる。さらに使用目的によっては軽く散水してヨゴレを落とすことができる。
Envuの推薦防除方法
注意事項を確認して的確な散布を行う。また、高温時や芝が衰退する時期または衰弱している状態では発生しやすく、症状も重度となりやすいので注意。
参考写真
殺虫剤の踏み込みによる足跡薬害(ベントグリーン 8月)
散布圧力の低下によって殺菌剤の高薬量投下(水量過多)になってしまった薬害(ベントグリーン 6月)
殺菌剤の重ね撒きによる扇状に発生した薬害(ベントグリーン 10月)
夏期高温時散布は濃度、水量を守っても薬害(黄化)が発生することがある(殺菌剤、ベントグリーン 8月)
4種のDMI剤散布によるポット植えのベントグラスの生育抑制、実用的には問題はない(左端のポットは無散布)
散布機のノズル不良から生じた除草剤の局所落下によって発生した薬害スポットライン(フェアウェイ 5月)
薬害層の確認. 採取ソッドの縦切りの切断面にベントグラスを播種後、発芽した幼苗が表面から約8mmの深さまで完全に枯死している
枯死原因の調査. 枯死ベントソッド表面の右半分にベントグラスを播種. 正常に発芽していることから枯死原因は化学物質ではないことを示す
細胞分裂阻害の除草剤散布によるこん棒状根(タコ根). 浅根性になっている部分で発生しやすい(ノシバラフ 6月)
除草剤の影響で根の伸長は停止しているが枯死には至っていない a:コウライフェアウェイ(9月) b:ドリフトによって発生した表面近くの短根(ベントグリーン 7月)