ローバーフロアブルの上手な使い方
ローバーフロアブル オンラインセミナーの動画と、質問&回答集です
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ベンズアミド系殺菌剤になります(FRACコード43)。ピシウム菌の細胞内にあるスペクトリン様タンパク質に作用します。スペクトリン様タンパク質の非局在化によって細胞骨格が細胞膜を支えられなくなり、細胞膜が崩壊することによって病原菌の増殖を防ぎます。
食用作物による浸透移行性および浸達性を確認しています。また、これまでの知見より浸達性がより顕著と考えています。
有効成分が濃い濃度で植物体内に留まるという点が一番のメリットと考えれられます。浸透移行性の強い剤だと、有効成分は上方または下方にどんどん移行し、成分は薄まることが考えられます。植物体内に吸収されると耐雨性も向上します。
芝生に登録のある殺菌剤でベンズアミド系の殺菌剤はローバーフロアブルのみになります。ピシウム病菌での耐性菌の発達は報告されていませんが、耐性菌発達リスクは中程度になりますので、他の系統の殺菌剤とローテーションを組んで散布するようにしてください。また、夏期高温時に連用すると黄化等の薬害が発生する可能性がありますので、薬害リスクの面からも連用は避けてください。
ピシウム菌に対する耐性菌発達の報告はありませんが、耐性菌発達リスクは中程度とされています。よって、他の系統の殺菌剤とローテーション散布を実施するなどして、耐性菌が発達しないように十分気を付けてください。
ローバーフロアブルは、ピシウム菌の菌糸の伸長を阻害するだけでなく、胞子発芽や遊走子発芽、遊走子放出、遊走子遊泳など、ピシウム菌の生活環における様々なステージでピシウム菌の活動を阻害します。
特に遊走子遊泳阻害は、ピシウム病が急激に進展するのを抑える効果を期待できます。ピシウム菌類に特徴的な遊走子は植物への侵入に大きな役割を持ちますので、本病害防除に有益なポイントと考えています。
散布するゴルフ場の環境や散布時の気象条件等、ピシウム病の発生圧によって大きく左右されますので一概に「~日間」の残効があるという事は言えません。ただし、夏期高温期によく使用されているピシウム専用剤と同等の残効期間はあると考えられます。
ローバーフロアブルは予防効果だけでなく治療効果も期待できます。ただし、ピシウム病防除の基本は発生させないことだと考えていますので、出来るだけ発生前の予防散布を実施することを推奨します。
また、どの殺菌剤でも言えることですが、治療効果とは発生後の病害を止める効果があるという意味で、病害から回復させる効果があるという意味ではありません。病斑の伸展は止められますが、そこからの回復は芝生の体力(回復力)に掛かっていますので、芝生を健全に育てておくことが最も重要であると考えられます。
現場の発生圧や発病前なのか、発病後なのかで異なります。発病前であれば100mL/㎡で良いと思います。発病後であれば水量は多めの方が良いと考えられます。
低温性のピシウム菌にも効果があります。ただ、高温性のピシウム菌に対する活性の方が高いと考えておりますので、夏シーズンの使用をおすすめします。
試験結果はありませんので何とも言えませんが、ピシウム菌由来の黄化症であれば効果がある可能性はあります。
ただし、繰り返しになりますが試験結果はありませんので、その点はご承知おきください。
ピシウム病防除の基本は発生させないことですので、発生前の予防散布での使用を推奨します。低温性ピシウムから高温性ピシウムまで効果を期待できますが、試験結果からは赤焼病および高温性ピシウムでより効果が安定する傾向が見られています。ベントグラスに対する病害の重症度から見ても赤焼病や高温性ピシウムのほうが被害が大きくなりやすいため、ピシウム性病害の発生圧が最も高くなる梅雨明け~9月上旬頃の間に、ローテーション剤の一角として散布することを推奨しています。
弊社製品でピシウム性病害に登録のある殺菌剤はローバーフロアブル以外ではシグネチャーWDG、プロテクメートWDG、デディケートフロアブルがあります。残念ながらピシウム性病害の発生圧が最も高い夏期高温期に、単剤でピシウム性病害の発生をしっかり抑えられるだけの活性を持っているのは、ローバーフロアブルのみとなります。したがって、夏期高温期のローテーションは他社のピシウム専用剤と呼ばれるような殺菌剤とのローテーションを推奨しています。
一方で、シグネチャーWDGは初夏~梅雨明けまでに複数回散布することによってベントグラスの病害抵抗性を高め、健全なターフコンディションの維持に貢献できることが分かっています。このことより、シグネチャーWDGは初夏~梅雨明けまでの複数回散布を推奨しています。
プロテクメートWDGは接触型の殺菌剤で、ベントグラスを鎧のようにガードして病原菌の侵入から守ります。炭疽病防除や藻類の防除にも有効ですので、こちらも初夏~夏にかけての使用を推奨しています。ピシウム病防除メインというよりも、炭疽病や藻類防除をメインに散布し、同時にピシウム菌の密度を抑制するというイメージで使用していただければと思います。
デディケートフロアブルは、ピシウム病だけでなく、炭疽病、ダラースポット病、フェアリーリング病など幅広い抗菌スペクトラムが特徴の剤になっています。本剤も、メイン目的をピシウムに据えるのではなく、初夏~夏の時期に様々な病害の発生圧が高いときの総合殺菌剤として使用していただくことを推奨しています。
登録内容を守って使用するようにしてください。
赤焼病、ピシウム病以外の病害への効果はあまり期待できないと考えています。
ピシウム菌は地際部から地下部に生息すると考えられています。したがって、薬剤を地際部より下に落とすことが効果を発現させるための大きなポイントになります。特に剤を葉面に付着させる必要はあまりありませんので、効果の面だけを考えると朝露の有無は殺菌剤の効果にあまり影響しないと考えられます。表面が乾いていおり床砂が湿っている、いわゆる通常の状態であれば、こちらも殺菌剤の効果に大きな影響を及ぼすことはないと考えられます。
一方で乾燥害が発生するほど乾いている場合は、有効成分が地際部や地下部に到達しない可能性もありますし、芝自体が乾燥害によるダメージを受けている場合は、農薬によってさらにダメージを受ける可能性もありますので、乾燥害を解消させてからの殺菌剤散布が有効であると考えられます。
優れた浸達性がありますので、散布後速やかに植物体内に吸収されます。散布中や散布直後の降雨の影響は当然ありますが、散布数時間後の降雨であれば、それほど影響を受けないと考えられます。
バレイショの疫病に対する効果試験では、散布1時間後に人為的に散水して効果を調べましたが、降雨無しに比べて80%程度の効果を示しました。
耐雨性を確認する試験では、散布1時間後の降雨においても80%ほどの高い防除価が得られているので1時間がひとつの目安と考えられます。間隔は長ければ長いほど良いのは当然ですが、例えば15分後に降雨があったからといって、すぐに追加で薬剤を散布する必要はないと考えています。そのような状況では、その後の現場の状況を良く観察し、病気の拡がりが疑われる場合、別の系統の薬剤の散布をお願いします。
展着剤加用による試験は実施していませんので何とも言えませんが、現状では不要であると考えます。
ピシウム菌は主に地際部や根部に生息していますので薬剤を地際部や根部に到達させる必要があります。一般的に展着剤は地上部(葉)の濡れ性向上のために使用されますので、展着剤は不要であると考えられます。
浸透剤や薬液を地際部に落とすようなタイプの展着剤であれば効果が安定する可能性はありますが、ローバーを使用するタイミングは夏期高温期が想定されますので、当然薬害のリスクも考慮しなければなりません。浸透剤や展着剤を入れることによるプラスの効果と、薬害のリスクというマイナスの効果を比較した場合、浸透剤や展着剤を加用するメリットは小さいと考えられます。
最大の特徴はローバーフロアブルにしかないユニークな作用機作になります。また、いわゆる夏期高温期のピシウムの発生圧が高い時期に使用されるようなピシウム専用剤と同等の高い防除効果があると考えています。他の系統とピシウム専用剤とローテーションを組んで予防的に散布するようにしてください。
登録は水量100mL/㎡、200mL/㎡、500mL/㎡で取得していますが、散布水量は多いほうが効果は安定すると考えられます。ピシウム菌の生息部位が地際部や根部であること、ローバーフロアブルが下部方向に浸透移行しないことなどが主な理由になります。
委託試験を依頼した試験場からも多水量のほうが効果が安定する旨のコメントをいただいています。
夏期高温期の午前11~12時ぐらいに水量100mL/㎡、10日間隔で3回連続で散布すると黄化が認められました(のちに回復)。年間使用回数は2回ですので、それ以上使用することはないと思いますが、薬害リスク低減と耐性菌発達を防ぐためにも他の系統の殺菌剤とローテーションを組んで散布するようにしてください。
管理方法などで変わりますが、早ければ3~4日、長くとも2週間ほど、平均すると1週間程度で回復すると考えています。根上がりや矮化は現時点では確認されていません。
芝の状態にもよりますが、2~3倍の重ね散布で影響が出たとしても、ひどい状態にはならないのではないかと思います。スプレイヤーが止まった状態でノズルが開きっぱなしになっていた、など大量に薬液が入った場合はリスクは高くなりますので、そのような場合は散水等で濃度を薄めることをお勧めします。均一散布の励行をお願いします。
混用可否表を参照してください。ただし、薬効を保証するものではありません。また、肥料との混用や3種類以上混用する場合には、事前にバケツ等で混用可否を確認することをおすすめします。
海外の文献等で混合剤のことを知られたのだと思います。混合剤は成分の比率が良くなく、またローテーションを含めた使い勝手の面から単剤の使用方法を検討した結果、ローバーフロアブルに行きついています。海外の文献にある成分投下量よりも多めの薬量設定となっており、効果安定化を実現しています。