冬編
(NEW)来年の年間予算を考える時期なのですが、何か注意すべきポイントはありますか?
まずは今年の状態を振り返って、上手くいったことと上手くいかなかったことを整理してみることをおすすめします。
その中から上手くいかなかったことを、長期計画で改善するべきもの、中期計画で改善するべきもの、短期計画(来年1年間)で改善するべきものにグループ分けしてみてはいかがでしょうか。改造工事が必要なものや大掛かりな伐採、暗渠排水工事などはコストも時間もかかりますので、中長期的な計画が必要になります。一方で主に施肥薬については年ごとに柔軟に変更することが可能だと考えられます。
農薬については、各メーカーが新剤を相次いで上市しています。弊社もスズメノカタビラ用除草剤ティアラフロアブル(2020年)、ジアミド系殺虫剤テトリーノフロアブル(2021年)、ピシウム性病害専用の殺菌剤ローバーフロアブル(2021年)などを上市しました。新しい系統の薬剤であったり費用対効果に優れていたりと、各々に剤の特徴がありますので、それらの特徴を踏まえたうえで来年の計画に組み込んでみてはいかがでしょうか。
また、ベントグリーンの病害防除についてはストレスガード製剤のプログラム予防散布も有効です。春からの予防散布で夏の病害をしっかり抑えられれば、発生後の治療散布を繰り返すことによるグリーン用殺菌剤の予算オーバーを防ぐことも可能です。予算作成の段階から、ベントグリーンの病害防除にストレスガード製剤の予防散布プログラムを計画してみてはいかがでしょうか。
(NEW)ベントグリーンの低温性ピシウム対策って必要ですか?
低温性ピシウムは秋から翌年春にかけて発生するピシウム性病害のことを指します。病原菌はPythium vanterpooliiやPythium volutumなどと考えられています。
病徴は褐色、黄褐色、赤褐色、黄化症状など様々で、不明瞭な不定形パッチを示すこともあれば明瞭なリング状を示すこともあり、目視による診断は困難です。よって、病斑のような症状が見られた場合は、病害診断を活用することをおすすめします。
低温性ピシウムは夏期高温期に発生するピシウム性病害に比べると病徴は軽く、裸地化するほど深刻なダメージを負うことはほとんどありません。また、一般的には春になりベントグラスの活性が上がってくると自然治癒することが多いです。しかし、グリーン全面に多発する場合もあり、美観上やプレー上の問題になることがありますので注意が必要です。
殺菌剤は11月下旬~12月上旬以降、病害発生初期の散布が効果的です。ただし、毎年低温性ピシウムが発生するコースでは、病害発生前の予防散布をおすすめします。低温性ピシウムの場合はベントグラスの根に感染していることが多いため、出来るだけ多水量で散布するようにしてください。
Envuがおすすめする殺菌剤:ローバーフロアブル
参考ページ:発生させないことが最大のポイント「ピシウム病対策」
秋に除草剤を散布していたのですが、年末年始頃から少しずつスズメノカタビラが目立ってきました。土壌処理剤の効果が切れてきたのでしょうか。また、どのように対処すれば良いでしょうか。
年末年始ごろに目立ってくるスズメノカタビラは、秋の除草剤散布時の取りこぼしであると考えられます。土壌処理剤の効果が切れてきたわけではなく、秋の除草剤散布時にすでに発芽しており、且つ秋に土壌処理剤と混用した茎葉処理剤が十分にかからなかったために、枯死せず生育してきたものが年末年始ごろから目立ってきます。
対処方法はなるべく早く、発生後のスズメノカタビラに効果のある除草剤を散布することです。EnvuではトリビュートOD+アージラン液剤の混用散布もしくは、トリビュートOD+ティアラフロアブルの混用散布を推奨しています。展着剤を加用するとより効果的です。
なお、土壌処理剤の効果が残っているかどうかを調べる方法としてバイオアッセイ試験があります。試験の方法は
① 気になる場所の土壌をホールカッターで抜き取ってきて縦方向に半分に切ります。
② 断面に上から下まで線上にベントグラスなど寒地型芝草の種を播種します。
③ 乾燥させないように霧吹き等で定期的に水分を供給しながら、室内の暖かい場所で養生します。
④ 1週間ほどで種が発芽してきますので、発芽状況を確認します。
⑤ 地表部分近くの種は発芽せず、地表から1~2cm下の種が発芽すれば土壌処理剤の効果がまだ残っていることが確認できます。
例年は積雪が多い地域ではないのですが、大雪になる予報が出ています。ベントグリーンに雪腐病対策の殺菌剤を散布したほうがよいのでしょうか。
雪腐病は大きく分けて、雪腐(褐色、黒色)小粒菌核病、紅色雪腐病、雪腐大粒菌核病、褐色雪腐病があります。このうち、北海道や東北地方、高冷地など積雪が多い地域で発生しやすいものが雪腐小粒菌核病と褐色雪腐病になります。例年、いわゆる根雪になる地域では、これらの雪腐病対策として、根雪前に殺菌剤を散布することを推奨しています。
雪腐大粒菌核病は積雪の有無にかかわらず土壌が凍結するような北海道東部などの地域で発生することが多い雪腐病になります。
一方で紅色雪腐病(ミクロドキウムパッチ、フザリウムパッチ、ピンクスノーモールドとも呼ばれます)は、積雪の有無に関係なく発生します。
普段、積雪があまりない地域で大雪予報が出ている場合でも、根雪になることはほとんどありませんので、大雪予報が出ているからと言って、雪腐小粒菌核病や褐色雪腐病の発生を心配する必要はないと考えられます。
ただし、前述の通り積雪の有無にかかわりなく紅色雪腐病が発生する可能性はありますので、初冬にユキスター水和剤のような紅色雪腐病に効果のある殺菌剤を散布しておくことをおすすめします。ラフの芝生が薄い場所でウラジロチチコグサやオオアレチノギク、ハルジオンなどのロゼット型の雑草が目立ってきました。寒い時期に除草剤を散布しても効果がありますか?
冬期の雑草は緑色をしていますが、その多くは生育を抑えて春が来るのを待っている状態ですので、除草剤成分の吸収スピードや植物代謝は低下しています。よって、雑草を枯死させるまでには通常よりも多くの時間を要しますので注意が必要です。
発生後の広葉雑草に対しては、出来るだけ早い時期に、幅広い広葉雑草に対して効果のあるデスティニーWDGを散布することをお勧めします。また、土壌処理剤のスペクタクルフロアブルは、スズメノカタビラだけでなく様々な広葉雑草に対しても発生を抑える効果がありますので、広葉雑草の発生が目立つコースでは、秋の土壌処理剤にスペクタクルフロアブルを使用することも有効であると考えられます。毎年、春に状態が悪くなる日本芝があるのですが、冬季にDMI剤を散布すると効果が期待できますか?
春から初夏にかけて日本芝の状態が悪くなる要因は、春はげ症(疑似葉腐病)、ゾイシアデクライン、ネクロティックリングスポット、炭疽病などの病害や、チガヤシロオカイガラムシなどの虫害など様々な要因が考えられます。よって、まずは要因を特定することが重要になります。弊社でも実施しています病害診断等を活用して、要因を特定することか初めてみてはいかがでしょうか。
仮に、春はげ症やゾイシアデクラインなどの病害が要因であった場合、殺菌剤の散布適期は秋になります。まだ芝生が動いている秋に効果のある殺菌剤を散布するようにしてください。Envuでは、春はげ症に対してはオブテインフロアブルを、ゾイシアデクラインに対してはクルセイダーフロアブルをおすすめしています。
また、全ての病虫害や雑草に対して言えることですが、芝生を健全に生育させておくことが最も効果的な病虫害・雑草防除の方法になります。適切な施肥や散水、刈込などの作業を行うだけでなく、冬期の比較的時間に余裕があるうちに、樹木の剪定や伐採、排水不良箇所の暗渠排水管敷設工事などもやっておくと、今後の病害虫や雑草の発生を抑えることにつながると考えられます。