藻類
病原体:土壌藻類(藍藻類=シアノバクテリア、緑藻類、珪藻類)
グリーンで問題となる土壌藻類は主として藍藻類のフォルミディウムとノストック、緑藻類のクレブソルミディウムの3種である。多くの微生物が活動を停止している冬期にも藻類は活動しているが、特に梅雨~夏期にかけて大繁殖して暗緑色のパッチ状になって肉眼でも見えるようになる。美観を損ねるだけでなく、芝は養分や酸素の供給が抑えられて弱ってしまう。さらにサマーデクラインやブラックレイヤー形成の原因のひとつにもなる。
菌の主な生息部位
発生芝種・発生時期
発生生態
グリーンがサンド化され、少肥料管理になったことで土壌微生物相が単純貧弱となり藻類の大発生につながった。グリーンで問題となる土壌藻類は主とし て藍藻類のフォルミディウムとノストック、緑藻類のクレブソルミディウムの3種である。単細胞の小さい藻類(シリンドロシスティス、メソテニウム、珪藻類 など)もグリーンに発生するが散水や降雨によって流されるため問題になることが少ない。多くの微生物が活動を停止している冬期にも藻類は活動しているが、 特に梅雨~夏期にかけて大繁殖して暗緑色のパッチ状になって肉眼でも見えるようになる。このように大発生すると美観を損ねるばかりでなく、芝は養分や酸素 の供給が抑えられて弱ってしまう。さらにサマーデクラインやブラックレイヤー形成の原因のひとつにもなる。 池の水にはグリーン上の土壌藻類とは異なり、より多くの種類の水中に適した藻類が発生する。一般的に藍藻類は好アルカリ土壌を、緑藻類は中~酸性土壌を好む。
予防対策
藻類増殖を抑制するためには過湿と芽数(少なければインターシード)に注意することである。薄目砂の回 数施用、液肥(特にりん酸)の控え(または施 用後すぐに散水して表面を洗い流し)、高刈り(4mm以上)、日陰対策も抑制的に作用する。硫黄やアミノ酸などの施用は藻類の重要な栄養源となる。まだ パッチ状に出ていない時期(5月ころ)に薬剤や酸性資材(硫酸カルシウム)を散布しておくと非常に効果的となる。これはサマーデクラインの抑制対策にもな る。 池の水の散水は水中藻類を持ち込むというよりも栄養分に富んだ水を供給することの方が問題である。
治療対策
クロロニトリル剤、ジチオカーバメート剤、DMI剤などが有効であるが、大発生してからではパッチの消失は困難となる。散布は少水量散布(0.2L/m2以下)でも有効であるが土壌の中の休眠藻類までの防除は不十分となる。午後よりも午前の散布の方が経験的に結果がよいとの意見もある。一般的には芝生面が乾いているときの散布、散布後の目砂施用はより効果的である。
Envuの推薦防除方法
ジチオカーバメート剤などを予防散布します。酸性資材を継続的に処理すると発生が抑えられると考えられています。
参考写真
グリーン上で発生する最も多い藻類2種類 a:各細胞が不明瞭で藍色の藍藻類フォルミディウム(ユレモ) b:個々の細胞が明瞭な緑色の緑藻類クレブソルミディウム(ヒビミドロ)
黄緑色をしたクレブソルミディウム(緑藻類)のトリコーム
直線状のフォルミディウムは水中で回転しながら前進できる能力があり「ユレモ」といわれるゆえんである
ノストック(藍藻類)の細胞は丸いので数珠状になってトリコームを形成している
地上部近くの根の表面に増殖した緑藻類(種類不明)。数個の細胞が集まってひとつの丸い形をしている
大発生すると黒色に見えるフォルミディウムはベントグラスの葉の上までかぶさってきている(ベントグリーン 7月)
グリーン上で大発生しているフォルミディウムを観察すると、束になって増殖している(6月)
大発生しているソッドを採取してみると表層2mmの厚さで藻類の蓄積層がみられ、こうなると土壌に酸素が供給されにくくなる(ベントグリーン 8月)
ほぼ1種類の緑藻類(クレブソルミディウム)が増殖した場合は緑色となる(11月)
ノストック(藍藻類)の塊。グリーンでは刈取り作業が入るため大きな塊としてはほとんど見られない(ティ 5月)
ゴルフ場内の池の水から見つかった緑藻類. a:チリモ b:クロレラ c:4個の細胞が付着したイカダモ d:三日月形のイカダモ e:勲章の形をしたフタヅノクンショウモ
ゴルフ場内の池の水から見つかった珪藻類. 細胞壁に珪酸を含み、黄金色の葉緑素を持っているため黄褐色にみえる. グリーンにも発生するが水に流されるため問題にはならない. a:オビケイソウ b:ハネケイソウ(泳ぐ) c:アウラコセイラ
ゴルフ場内の池の水から見つかった高等な緑藻類. a:アオミドロ 葉緑体がらせん状に並んでいる. 直角の薄い仕切りは細胞壁 b:ホシミドロ 葉緑体が星のようになっている. いずれも水生藻類であり、グリーンには発生しない