ペストコントロールと公衆衛生史(1-4)
コラム1-1, 1-2, 1-3の続きをご紹介します。第1シリーズは最終回となります。最後までお楽しみください。
公益社団法人日本ペストコントロール協会 副会長 元木貢氏
15.IPMの普及啓発
(1) 日本ペストコントロール協会におけるIPM宣言
平成14年(2002年)5月24日の定期総会で以下のIPM宣言を行い、協会として人の健康と環境への配慮を念頭に入れて防除を行うことを宣言し、会員へIPMマニュアル(図13)と建築物衛生法のねずみ昆虫等防除業の指定団体である日本ペストコントロール協会と全国ビルメンテナンス協会からなる害虫防除業中央協議会からパンフレットを出しました(図14)
日本ペストコントロール協会におけるIPM宣言平成14年5月24日 我われPCOは、有害生物の防除を通して、健康で快適な生活環境を守るため、総合的な手法であるIPM (Integrated Pest Management) によって、以下のように対策を実施することを目指します。
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図13. IPMマニュアル
図14. IPMパンフレット
(2) IPMが建築保全業務共通仕様書に盛り込まれる
官公庁の建物は、「官公庁施設の建設等に関する法律」に基づいて適正な維持管理を行なうことが義務づけられています。平成15年(2003年)にこの法律の基準である「建築保全業務共通仕様書・同積算基準の解説」に掲載され、平成20年(2006年)には「建築保全業務共通仕様書・同積算基準」資料編に掲載、平成25年(2013年)本編に組み込まれ、IPMに基づくネズミ昆虫等の防除が盛り込まれました。これを契機に広く民間にも普及していきました。
平成30年(2018年)には特記仕様書も追加されました。(公社)日本ペストコントロール協会ホームページにも記載され、簡単に仕様書が作成されるようになっています(図15)。
図15. 特記仕様書
(3) 食品衛生法の改正とIPM
平成30年(2018年)6月13日に食品衛生法が改正され、HACCP(ハサップ)*に沿った衛生管理の制度化が盛り込まれ、総合的有害生物管理(IPM)の考え方を取り入れた防除法が示されました。
*HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、食品による健康被害の原因となる危害要因(ハザード)を分析し、それらの危害要因を除去させるために重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法で、ねずみ昆虫等も重要な危害要因となります。
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