HACCP普及の経緯とグローバル動向
HACCP普及の経緯:
HACCPは“宇宙食の安全確保”という、特殊な目的を達成するための手段として生み出されました。
1960年頃にアメリカ合衆国がアポロ計画(人類初の月への有人宇宙飛行計画)に着手した当時、100%に限りなく近い安全性を持った宇宙食はまだ開発されていませんでした。しかし、宇宙食には当然100%の安全性が要求されます。そこでアメリカのNASAと研究者が宇宙食の安全性確保のために開発したのがHACCPです。その後、1971年にアメリカの食品保護会議において、日常食品への衛生管理の方法としてHACCPが提案され、1973年に低酸性缶詰の製造基準にHACCPの考え方が取り入れられました。1990年代に入り、食品の安全性確保のため、アメリカ政府はHACCPの義務化の検討を進め、1997年にまず魚介類に対してHACCPが義務化されました。
また国際的な動きとしては、1993年に国際食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である国際食品規格(コーデックス)委員会が「食品衛生の一般原則」の附属文書として「HACCPシステム及びその適用のためのガイドライン」を公表し、そこからHACCPが各国で普及しはじめました。
グローバル動向:
つづいて世界各国のHACCP導入状況を詳しく見ていきましょう。
下記の表にあるとおり、1990年代に入って、最初にHACCP義務化に踏み切ったのはアメリカではなく、オーストラリア、カナダです(1992年)。アメリカはその後1997年にHACCPの義務化を行っています。2000年代に入って、台湾、EU諸国がそれに続き、2012年に韓国がHACCP義務化を開始しています。その他の地域としては、ロシア、メキシコ、ベトナムがHACCP導入を模索中で、中国、インド、タイは、輸出食品に限ってHACCPを義務付けています。
日本はと言いますと、まだHACCPの義務化は行われていません。2020年にHACCP義務化が開始されることが決まりましたが、他の欧米諸国と比べると、日本の取り組みは20~30年弱も大幅に遅れているのが現状です。
国・地域別HACCP導入状況
(表中の数字はHACCP義務化が始まった年)
注)国・地域によってHACCP義務化対象製品にバラつきがあります。
出典:平成27年2月 厚生労働省食品安全部監視安全課HACCP企画推進室「HACCP導入普及推進の取組」
平成29年12月 農林水産省食品産業局 HACCPの普及と制度化の検討状況について