2021年のベントグリーンにおける病害診断結果
Envuでは病害診断のご依頼を承っています。2021年は暖地型芝草で130検体、寒地型芝草で556検体の病害診断を行いました。寒地型芝草の検体数はここ5年で2018年の584検体に次ぐ数となり、多くのコースでベントグリーンの病害が発生したことが推察されます。
ここでは、2021年の全国の気象条件と、主に寒地型芝草の病害診断結果をご紹介します。
///// 下の図は2021年の全国の降水量、平均気温、日射量を地域ごとにグラフにまとめたものです。このグラフより以下の傾向が見えてきました。
// 全国的に2月~3月の気温が高く、暖かい春であった。日射量も多く、芝生の動き始めは例年よりも早かったことが推察される
// 札幌や仙台、富山では6、7月の気温も高かった
// 札幌では7月の降水量が例年に比べて極端に少なかった
// 札幌以外の地域では7月、8月の降水量は多く、特に西日本を中心に雨の多い夏となった
// 8月の気温は西日本では平年より低めで、雨も多かったことから、乾燥害でベントグリーンや日本芝がダメージを負うということはほとんど無かったのではないかと思われる
// 一方で、多雨によって病害の発生は助長されたことが推察される
// 秋の降水量は平年と同等であったが、日射量は東京以西を中心に平年より高くなっていた
※平年値は1991~2020年の平均値に更新された(昨年までの平年値は1981年~2010年までの平均値)
仙台、富山、東京では、8月の気温は平年並みで、仙台と東京では日射量も平年並みでした。ところが、8月の日別の平均気温や降水量、日射量を見てみると中旬に気温、日射量ともに大きく下がり、雨が多かったことが分かります。一方で上旬や下旬は平均気温、日射量共に平年値よりも高い日が多く、このことが月単位で見ると平年並みの値となった要因であると考えられます。以下のグラフは3都市の8月の気象データです。中旬に注目してご覧ください。
///// 次に2021年の寒地型芝草における病害診断数のグラフを示します。
// 2021年は3月の診断数が多かったのが一つの特徴になります。これは春の気温が比較的高く降水量も多かったことから、例年以上に病害が発生しやすい環境が整ったためだと考えられます
// 特に炭疽病もしくは細菌病と診断される検体が多く、3月の炭疽病の検出数は過去8年間で最も多くなりました
// 7月と8月の診断数がほぼ同数になったのも2021年の特徴と言えます。特に7月の診断数は2019年や2020年に比べると大幅増となりました
///// 続いて、寒地型芝草に発生する3大病害、ピシウム性病害、炭疽病、細菌病の年次比較を見てみます。
// 前述の通り、3月に炭疽病と診断された検体数は過去8年間で最も多くなりました
// 細菌病は3月の検出数が例年よりも多く見られましたが、1年を通してみると細菌病の発生数は少なかったことが推察されます
// 一方でピシウム性病害は7月の検出数が過去8年間で最も多くなりました。8月の検出数も比較的多く、今年は全国的にピシウム性病害の発生が多かったことが推察されます
///// 2022年の夏は暑くなるかも!?
// 気象庁の発表によりますと、2022年の夏は全国的に暑くなる可能性が高くなっています
// 2021年の夏は8月中旬に低温と降雨があり、ベントグリーンにとっては比較的夏越ししやすい年となりましたが、それでも病害の発生数は多かったことが推察されました
// 2022年は猛暑+病害によってベントグリーンが大きなダメージを負う可能性があります
// 初夏からの継続的な殺菌剤の予防散布で、病害の発生をしっかり抑え、夏に備えることをお勧めします。その際には、ぜひストレスガード製剤の活用もご検討ください
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