多年生イネ科雑草の生態と防除
2016年7月1日号
スズメノヒエ類やチガヤ、メリケンカルカヤなど多年生のイネ科雑草が増え、防除に苦労しているという話をよく耳にします。多年生イネ科雑草は一度定着してしまうと防除が難しく、薬剤を散布して一度枯れたように見えてもまた再生してしまうことが多いため、頭を悩ませているゴルフ場も多いはずです。
このような雑草はどのように防除していけばよいのでしょうか。まずはこれらの雑草の生態から見てみましょう。
多年生イネ科雑草の生態
■スズメノヒエ類ゴルフ場ではいくつかのスズメノヒエ類を見ることができ、スズメノヒエのほか、シマスズメノヒエやタチスズメノヒエなどがあげられます。
初夏あたりから出穂を始め、独特な形の扁平な穂をつけます。本州から九州まで広い範囲に分布しています。
(9月 関東地区ゴルフ場)
5月頃から初夏にかけて白いふわふわした綿毛に覆われた穂を出します。地下茎は横に這って伸びていき、生息域を広げていきます。
ゴルフ場だけではなく、道路周辺や空き地などにもごく普通に見られ、多年生イネ科雑草としては最も発生が多い雑草の一つです。
(5月 関東地区ゴルフ場)
北アメリカ原産の帰化植物です。近年ゴルフ場でもその発生が目立つようになりました。チガヤやスズメノヒエ類は初夏に穂を出しますが、メリケンカルカヤは9月頃から出穂します。背も高く伸び目立つため、ゴルフ場の景観に影響することから問題になっています。
(5月 関東地区ゴルフ場)
ヨーロッパ原産の帰化植物です。明治時代に牧草として導入され全国に広がったといわれています。その名の通り春から出穂し、穂にはおしべがよく目立つように伸びてきます。乾燥させると独特な甘い香りがするのも特徴の一つです。
(3月 関東地区ゴルフ場)
多年生イネ科雑草の防除を難しくしている要因
多年生のイネ科雑草は総じて刈り込みに弱いため、刈り込み頻度を上げることで密度を減らしていくことが可能です。
しかしながら、これらの雑草がはびこる場所はラフなど普段刈り込み回数が少ない場所のうえ、昨今は人員不足などでなかなかラフなどの刈り込みに十分手がかけられないことなどが、耕種的な防除を難しくしています。
また、スズメノヒエ類は刈り込みに比較的強く、横に這うように生育できるので、刈り込みだけでは十分な対処にはならず、より防除を難しくしています。
薬剤による防除のポイント
耕種的防除以外の方法としては、薬剤による防除方法があげられます。とはいえ、多年生イネ科雑草は前述のとおり薬剤の1回の処理だけですべて防除するのは難しい雑草です。
では、どのようにすれば効率的に防除ができるのでしょうか。
一番のポイントは複数回の防除で、徐々に株を弱らせていくことです。
6月から7月くらいにかけての生育期と秋期の散布を繰り返すことで、多年生イネ科雑草の株は大きく成長することができず、徐々に株が小さくなっていきます。また、1ヶ月程度の間隔をあけて、連続処理することも有効です。
すぐにすべての雑草をなくすことはできませんが、このようなしつこい雑草は根気強く防除を続けていくことが、雑草を減らす近道になります。
多年生イネ科雑草は、一度はびこってしまうとなかなか防除が難しい代わりに、防除してしまえば再びはびこるまでには時間を要します。根気よく防除した後は、早めの防除を行い、再びはびこることのないようこまめに対処するようにしましょう。
Envuのおすすめ防除
EnvuではトリビュートODを多年生イネ科雑草(スズメノヒエ類・チガヤ)に登録拡大しました。
ただし、高温時には日本芝に対して黄化の薬害を生じますので、十分注意して使用してください。